まだ国内で始まったばかりのeBike。既存のサイクリストには聞き慣れない型式認定という制度によって、「eBikeってパーツ交換したら公道走行してはいけないみたい…サドルひとつ交換してはいけないらしい…」という噂が出回っています。
さて果たして本当にそうなのか?車両検査協会や、国内でeBikeを既に発売している複数のメーカーの関係者に聞いた話をレポートする前に、答えを言っておきましょう。基本的に今までのスポーツサイクルと同じようにパーツの交換は可能。ただし自己責任。しかしながらアシストユニットのアシスト比に関わる部分の改造(ユニットの制御系の改造やタイヤ周長の大幅な変更)は道路交通法に触れます。
(法律に触れない範囲でパーツを交換した車両の例)
まず型式認定制度について紹介しましょう。道路交通法(道路交通法施行規則 施行日:平成30年4月1日)では、電動アシスト自転車及び、普通自転車(人力のいわゆる軽快車)を製造するメーカーは「型式認定を受ける事ができる。」と書かれています。
(原文ママ。総務省 電子政府e-Govより)
「型式認定を受けることができる。」なので、型式認定を受けていない自転車を発売する事自体は法律に触れる行為ではありませんが、シマノ、ボッシュ、ヤマハ等の主要ユニットを搭載したブランドは軒並み型式認定を取得しています。取得に掛かるコストはeBikeの販売規模を考えると無視できないコストですが、何故メーカーは「受けることができる」ものをわざわざ受けているのでしょうか?
その大きな理由のひとつは、国土交通省のお墨付きを取得することによって、将来にわたって公道走行することを保証されるため。ちなみに、普通自転車の世界ではもはや型式認定を受けていない車両は普通に出回っています。そもそも電動アシスト自転車が出て来てから、ハンドル幅が600mmを超える普通自転車規格外の自転車が歩道走行不可能なのを知った人も多いはずです。
とある主要メーカーのプロダクトマネージャーは匿名を条件に筆者に語りました。将来、eBikeで何か大きな事故などが発生したときに、有識者会議によって型式認定を取得していない車両はすべて公道から排除される可能性は否めないため(これは法律の変更を伴うため相当にハードルは高い)、エンドユーザーに公道走行可能な自転車を販売するメーカーの責任として「取得することが出来るもの」を取得して販売しているという訳です。
では、その型式認定を取得した車両にパーツを追加したり、変更したりした場合はどうなるのでしょうか?これについては車両検査協会の検査担当の方に電話取材を申し入れて確認したところ、型式認定を取得したときに装着されていないパーツ(例えばキャリアとかフェンダーなど)を追加で装備する分には型式認定の枠の中からは外れないと考えられる。一方でパーツを変更した場合はどうなるのかと聞くと「その場合は、型式認定からは外れます。よってその使用については車両検査協会としてはコメントする立場にはありません。あくまで自己責任となります。」との回答でした。
道路交通法(道路交通法施行規則 施行日:平成30年4月1日)が定めているeBike、つまり電動アシスト自転車に関する法令は、
(原文ママ。総務省 電子政府e-Govより)
のみで、要するに型式認定は取得することが出来る(取得することが義務、もしくは取得していない車両の公道走行を禁止するとは書かれていない)ものであって、アシスト比が規制の範囲内を上回らない限り、公道でのその走行を禁止する法令は道路交通法としては存在しません。
しかし、ホイール周長をユニットメーカーが想定している誤差以上に大きくする事はアシスト最高速度を向上させることになるため、これは法律に違反します。またユニットのアシスト出力設定を変更したりすることは、法律に触れる可能性があるだけでなくユーザー自身で自分達の遊ぶフィールドを狭めてしまうことになるためeBikeユーザーとしては御法度と考えるべきでしょう。
また、通常のロードバイク等でも同じですが、パーツを交換した場合はメーカー保証の対象外になる事が多いですし、また、それが原因で事故が起こったときも自己責任となります。そして、単純に交通事故などが起きたときも、型式認定取得済み車両であれば、その車両が公道を走行するためのすべての用件を満たしていることを国土交通省がお墨付きを与えている状態ですが、パーツの変更を行った車両の場合は自分の責任によって公道走行可能な車両である事を証明する必要が出て来る可能性を否定出来ません。
また、タンデム自転車のように自治体の条例などによって規制が行われいる可能性も否定できず、結果、パーツを変更した自転車での公道走行は自己責任という事になります。もちろん完成車メーカーにパーツ交換しても良いですか?なんて問い合わせるのは野暮ってもんです。自己責任で楽しみましょう。
注意:本レポートは取材に基づいた筆者の個人的解釈をレポートしたものであり、全国のすべての法令、条例を調べた上でのレポートではないため、その適法性を保証するものではありません。実際の改変、公道走行においてはご自身の責任で行ってください。あらかじめご了承ください。要するに自己責任です。
文:難波賢二
2018/5/28